翼~開け放たれたドア~
“連れてきたか”と言ったのは、藍色の髪の短髪の男。

切れ長の黒の瞳を細めている。

冷静な感じで、こんな人が荒れたら大変なんだろうなって思った。いや、実際荒れてたけど。





「wingだぁーっ!!」

小さい男が私のほうに突進してくるから、スッと横に避けた。

避けられた男はそのまま壁に激突。

「いたーい!!」と打ちつけた鼻を押さえて涙目になっている。

「いきなり来られたらそりゃ避けるだろ。
後先考えないからいつもそうなるんだぞ。優太ユウタ」

「ひどーい!!信ノブだってこの間まで考えることしてなかったくせにー!」

「それはお互いだろ。今は違う」

「僕いつも考えることしてなかったっていうのー!?」

「あぁ、一言で言うならアホだな」

「信ひどい!!!」

目の前で繰り広げられる口論に、思わずため息がでた。

「賑やかだな、ここ」

呟くと、隣の緑頭がピクリと肩を揺らした。

「…wingのおかげだ。お前がいなかったら、今も荒れたまんまだったかもしれねぇ」

「……そうか」

「前のここより今の方がずっと楽しいんだよ。
こいつらもこんな風だなんて、あのまんまだったら知らずにいたんだと思う。
だから…感謝してる」

「ありがとな」と笑った緑頭。

だけど私はそれを見て、なんだか胸が締めつけられた。

違う。私は──

感謝されるような人じゃないよ。
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