翼~開け放たれたドア~
「俺は…」

何も、してない。

「なんもしてねぇよ」

何も、できない。

ただの…籠のなかの鳥だ。




「…緑頭」

「は?」

俺?的な感じの顔をしてたから、「頭、緑だから」と言った。

「あぁ。名前言ってなかったな。
俺は、馬渕 結翔マブチ ユイトだ」

「じゃあ、結翔。お前、電話で“新しくなった赤鬼を見て欲しい”って言ってたよな?」

「…そこだけはちゃんと聞いてたんだな」

苦笑した結翔の顔を見て確信した。

こいつ…

「まだ、何かあるだろ?」

「は…っ?んで、それ…」

図星を突かれたように慌てだす結翔。

結翔の顔はさっきまで笑ってたけど、そこには微かな緊張感があった。

まるで、何かに警戒しているような。

「…あーぁ。ほんとにかなわねーな。お前」

「でなきゃ潰せねぇよ。…何があった?」

「んー…、とりあえず…」

結翔は言葉を切ると、呆れた目線を私の後ろに向けた。
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