翼~開け放たれたドア~
学校についてすぐに理事長室へと向かう。

扉を開ければ、棚をガサガサとあさる雷の後ろ姿が見えた。

気配を消しつつ、そーっと雷に近づいていく。

「んー、あれー?」

何かを探しているみたいだ。

私は雷の真後ろへと立つ。

そしてそのままギュッと背中に抱きついた。

「おわっ!え、誰!?」

雷の慌てた声なんてお構いなしに、顔を背中にうずめた。

「あ、もしかして春輝か?」

「ん」

小さく頷く。

「おにぎりー」

「お、ちゃんと食ったか?」

「………食べた」

「なんだその間は」

「…1つ食べたもん」

とりあえずの言い訳をしてみるも、雷は笑いながら、「こら、ちゃんと食べろよ」と私の手を軽く叩いた。

「あんまりお腹空いてなかった」

「…あー、じゃあ甘いのなら食べるか?」

「食べる」

間髪いれずに即答した私に雷は苦笑してから、ちょっと待ってろ、と言い残して部屋にあったドアの1つへと入っていった。


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