翼~開け放たれたドア~
見上げると直は、いつもとは違う、でも作り笑いでもない、穏やかな笑顔を浮かべていた。

「…ちょっと来て?」

直は、私の頭をクシャリとさせて手を下ろしてから首を傾げた。

私もまた、首を傾げたけど。

「おいで」

差し出された手に、そっと私の手を重ねた。

なんだか、拒んじゃいけないような気がした。






「…ここどこ」

私はあたりを見回す。

いや、学校の中なのはわかるけど。

こんなところ来たことないし…。

「校舎のはずれだよ。
もうほとんど、使ってない空き教室ばっかだから誰も来ないよ」

サボリ以外はね、と付け足すように言った直は、いたずらっ子のように笑った。

直は私を連れて、空き教室の1つに躊躇なく入った。

入ってすぐに目に止まったものに、私は思わずため息をつきそうになった。

…なんでソファーあるの。

「雪が積もってきたら、みんなここに来るんだよ。今はまだ積もってはいないから、屋上のほうにある部屋にいるけどね」

「ふーん」

どうりでソファーが人数分あるわけだ。

お金かけすぎだとは思ったけど、とりあえずつっこまないでおいた。
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