翼~開け放たれたドア~
「品川コーポレーション…って知ってる?」

「ん。経済学で習った。
20年くらい前に、そこそこの会社だったけど、ある大きな会社の令嬢と結婚して、急成長を遂げた会社。
今は日本でも世界でもトップクラスの会社で、リゾートの建築や洋服まで、広い範囲で活躍してる」

ペラペラと話した。

あの頃、散々教えられたからイヤでも覚えてるんだ。

「春輝…、そんなのどこで…」

直の顔は見えないからどんな顔してるかはわからないけど、きっと驚いているのかな。

そりゃそうか。

学校とかだって、あのときの私は知らなかったんだし。

それを聞いていた直からしてみれば、学校は知らなかったのに、どうしてそういうことを知っているのか気になるんだろうね。

「……どこで、か」

ただ、私は

「あの人の命令で、何もない部屋で教えられただけだよ」

そう、何もない、冷たいあの部屋で。

あの頃は、くわしい時間なんてわからなかったんだよ。

ただひたすら、過ぎるのを待ってただけ。

夜がきたときだけは外にでられたから、夜がきたことを知ることはできたけど。
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