翼~開け放たれたドア~
私は唇を噛みしめた。

ギュッと目を強く瞑って、それからゆっくりと開けて、大きく息をはいた。

「品川コーポレーションがどうかした?」

強引に話を戻す。

「あ、ごめんね。
俺ね、そこの子供なんだ」

「…そっか」

それ以上何も聞かないでくれた直。

普通に話を戻したままでいてくれる優しさ。

それは、素直に嬉しいと思った。

「驚かないんだ?」

「…なんとなく気づいていたから」

本当はハッキングしたから知ってるだけだけどね。

「ふっ。そっか」

直は笑って、遠くを見つめた。

今日は晴れていたけど、なんだか気持ちは暗く感じた。

「これね、クセなんだよ」

「…笑うこと?」

「うん。もう小さい頃から」

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