翼~開け放たれたドア~
直はポツリポツリと話し始めた。

「俺の親は政略結婚だっだんだよ、春輝。
だから、跡取りである俺を産んでから好き勝手にお互い愛人作って、俺自身なんて全然見てくれなかった。
俺はそんな親しか知らないからかね、すごい無愛想な子供だったんだ。
そんな俺に父が“役立たず”って言ってからかな。
だったら笑ってればいいのかと思って、笑うことがクセになったんだ」

肩越しに見る直は、口元は弧を描いていたけど、目はすごく冷めていた。

「人には、“お金持ちでいいな”、“うらやましい”なんて言われるけど、なんでだろうね。
人より裕福な暮らしをしても、一番欲しかったものは手に入らなかった…」

声は段々と震えだし、目元には涙が浮かんで見えた。

私はただ、そんな直を見つめてながら話を聞いていた。

「……それで、昨日父と母が珍しく2人ともいて、どうしたのかと思った。
特に俺の目をきちんと見ることもなく、“お前が会社を継ぐことが決まった”って言ったんだ。
俺はただ、あぁ、そのときがきたのか。そうとしか思わなかった。
だけど…」

直は左手で顔を覆い隠した。

「だから、もう遊びは止めろって…、王覇を抜けろってことも言われたんだ…」



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