翼~開け放たれたドア~
でもその顔はすぐに驚きに満ちることとなる。

春輝が開けたドアの向こうに

「wing…?」

直の姿があったから。

「直、どうしてここに──」

「雷、龍也、行くぞ」

直の父親の声を遮り、春輝は直の横をすり抜けていったが、

「待って」

直に呼び止められ、足を止めた。

ゆっくりと春輝は振り返る。

直は真っ直ぐに春輝を見つめていたが、すぐに俯いてしまう。

「…なんだ?」

春輝はただ、そう言った。

直はグッと拳を握りしめ、春輝を見据えた。

「……君は、春輝をどう思ってるの?」

春輝は少し目を見開いた。

そんなこと聞かれるなんて思ってなかったんだろう。

だけど、

「……嫌いだよ」

すぐに表情を無に戻し、抑揚のない声で言い放った。

そのまま踵をかえし、歩き出す。



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