翼~開け放たれたドア~
──その頃の春輝たち

「…クシュッ」

春輝は小さくくしゃみをした。

「おーい、どうした春輝。風邪か?」

雷は笑いながら春輝の頭をクシャリとさせる。

「違うと思うけど。でも寒い」

「春輝さん、寒いから風邪引くんですよ。
気をつけてくださいね?」

龍也は心配そうに春輝に言い聞かせる。

「…そういえば」

春輝は突然、思い出したように話を切り替えた。

雷と龍也は、話の途中で春輝が突然声をだすから、なんだ、と春輝を見た。

「…2人とも、私の名前呼んだよね?」

──ギクッ

春輝はサラッと言ったが、2人揃って肩が飛び跳ね、顔がサァッと青ざめる。

それもそのはず。

春輝が強烈な殺気を放っているから。

2人だけに向かって。

「バレたら2人のせいだからね」

そう言う春輝は、表情こそは無だけれど、声はなんだかとけとげしい。

2人はただ、「ごめんなさい」や「すみません」をひたすら繰り返した。

それは、「まぁいいか」と、春輝がどうでもいいように呟くまで、延々と続いたという…。

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