翼~開け放たれたドア~
直は空を見る目を少しだけ細めた。

「春輝は……wingだよ」

──ザアァァァァ…

雨の音がやけに耳に響いた気がする。

周りの音が遮断され、直の声しか聞こえなかった。

「昨日、父さんの部屋から話し声が聞こえてきてね…、その声がなんだか春輝に似てたから思わず立ち止まったんだ。
内容までは聞こえなかったけど。
しばらくそこにいたけど、突然ドアが開いて、wingがでてきたんだ。
真っ白な髪と、紺色の瞳」

直は思い出してんだろう。

目をそっと閉じ、息を静かに吐き出した。

「そのあと、雷さんと龍也さんも出てきたけどね、俺とは目も合わせなかった。
まるで、wingだけしか見えてないように。
雷さんたちはそのまま部屋を出て行って、俺はそのあと、父さんと話をした。
謝られたよ。
俺は気づけたらそれでいいって言った。
だけど、なんでwingがいるのかと思ってね。
父さんはwingが俺にお世話になってるって言ってたって言ったけど、俺はwingと会ったことないって伝えた。
春輝って子なら、最近一緒にいるって言ったら、男2人が、wingのことを春輝って呼んでたと父さんは言ったんだ」
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