翼~開け放たれたドア~
ドクン、と。

心臓が一際大きな音をたてた気がした。

「はっ…、戻る?」

初めて笑った。

どす黒い感情が心を支配する。

「……私も、俺も、最初から闇(ここ)だ」

もう戻れない。もう戻らない。

でも、戻れるものなら。

忘れられるものなら。

何もかも忘れて、空に還りたいと、願ってしまうんだ。





ジャリと、足元が音をたてた。

そのまま地面を蹴って、一気に距離をつめる。

ピンクの髪の男の背中へとまわり、回し蹴りをかます。

「ぐっ…!」

「飛鳥!」

地面に手をつき、苦しそうにしている。

「人の心配してる場合か?」

振り返り、駆け寄ろうとした黄色の髪の男の鳩尾を殴る。

そのままグラリと身体が傾きかけたところを、足を振り下ろして地面に叩きつけた。

「かはっ…!!は、るき…!」

「…秋人!春輝!!もう止めろよ!」

銀髪が近寄ってくる。



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