翼~開け放たれたドア~
いずれも若く見える2人。

だけど、さっきの女の人の髪は。

この男の人の瞳は。

もう直に言われなくても、さっきの話から、この男がどういう奴なのか、容易に想像がついちまった。

俺は雷さんを見た。

雷さんは俺の視線に気づいてこっちを見ると、すげぇ悲しそうに微笑んだ。

龍也さんもそんな雷さんの背中を軽く叩いているけど、眉が下がっている。

それを見て確信した。

「あいつは……春輝はそいつらの子供だ」

春輝が、篠原組と赤城組の組長の孫だってことと、そして跡取りになりかねないことを──




「春輝が…次期組長ってことですか?」

俺はおそるおそる聞いた。

違うって言ってほしかったんのかもしんねぇ。

そんときの気持ちは、俺自身でもわかんなかった。

ただ、あいつが苦しむようなことはあってほしくないと、それだけを思っていた。

だけど、雷さんは静かに首を縦に振り、

「赤城組が春輝を攫ったのは…それが原因の可能性が高い」

そう、確信めいた声音で言った。
< 271 / 535 >

この作品をシェア

pagetop