翼~開け放たれたドア~
ダンダンダンと階段を駆け下りていく。

陰気な雰囲気と生臭い匂いに一瞬ぐらりとしたけど、それでも構わずに走った。

“どこだ…っ!?”

鉄の柵で区切られた個室のなかを見て回る。

何人か、閉じこめられている人を見かけた。

虚ろな表情でボーッとしている人もいれば、もう死んでんじゃねえかって感じの、横倒れになったまんまでピクリとも動かない奴もいた。

俺はゾクリとして、背中に冷や汗が流れたよ。

兄貴もこんなんなってたら…って考えちまってさ。

“愚問だな。そんなもの…私が君のお兄さんを地下牢に閉じ込めているからだよ”

あの人の言葉が俺の胸に突き刺さった。

兄貴のことばかりしか頭になくて、あの人を残してきたことなんて気にもしてなかった。
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