翼~開け放たれたドア~
“…雷……だろ…?”

“…あ、にき…”

“…相変わらず、泣き虫、だなぁ、お…前…”

そう言ってかすかに微笑んだ兄貴。

小さい頃は、兄貴にしがみついてよく泣いた。

…覚えていてくれてすげぇ嬉しかった。

“兄貴っ!ここ出よう!!”

俺は錆びて脆くなった鉄の柵を蹴って壊そうかと思ったが、兄貴が中にいるから止めた。


何かしらあった時のために用意していたピッキング用の針金を鍵穴に差し込んで、震える指でなんとか作業した。

──ガチャン

鍵が開く音が地下の廊下に響いて、キィ…と牢屋の扉が開いて、俺は大急ぎで駆け寄った。

“兄貴っ!!”

擦れて、色も褪せた兄貴の服の裾を握りしめ、俺は兄貴にすがりついた。

“兄貴…兄貴ぃ……会いたかった…”

“雷…わりぃな……。こんなんなっちまって…”

“兄貴は悪くねぇよ…っ!”

“…ありがと、な……。雷…”



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