翼~開け放たれたドア~
ボサボサな、俺と同じ色の髪も伸びきって、だけど、俺と同じ色の瞳を細めて微笑む兄貴は、いなくなる前に最後にみた兄貴と変わりなくて。

それが嬉しくて嬉しくて、もっと確かめたいのに、涙で視界は歪むばかりで。

俺はただ兄貴を呼んで泣き続けた──






そのあと。

兄貴は、なだれ込んできた警察の奴らに、地下牢で捕まってた奴らと一緒に保護されて連れて行かれ、俺は茫然と突っ立っていた。

……あの人が、恐ろしいと思った。

だってさ、俺の大切な人をあんな風にしてたんだ。

まるで、俺のことが全部わかってたみたいで、すげぇ恐かった。

神崎組の構成員の話だと、篠原シゲルは俺が走っていったあとに逃げ出して、捕まっていないらしかった。

こうなることも、計算してたのかはわかんねぇけど。


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