翼~開け放たれたドア~
「…これが、俺と春輝との出会いだ」

もう、誰も笑ったりなんてしていなかった。

王覇の奴らは、真剣な表情していたり、悲しそうな表情を。

龍也は、唇を噛みしめて眉間に皺をよせて、今にも泣き出しそうなのを堪えているような表情をしていた。

「春輝は、あのなかで教育を受けてきた。
跡取りとして、篠原の名に恥じないようにな。
大学の勉強も済ませてる。
だけど、外の世界をほとんど知らなかったんだよ。あいつ。
だってさ、あいつ、俺が連れ出して外でたときになんて言ったと思う?
“……久しぶりに太陽みた“
だぜ?
学校も、人の温もりも、飯が温かいってことも何もかも…。
知ることができなかったんだよ」

“ね、あの建物なに?”

“あんたの手、温かいね”

“…ご飯って温かくて、美味しいんだ……”
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