翼~開け放たれたドア~
「あーぁ…」

ダメだこりゃ。

「やっぱ、あいつ助けないと」

俺は笑った。

思い出されるのはいつだって、大切なあいつの微笑んだ姿。

手放すわけにはいかないんだ。

あの日のように、後悔なんてしないように。

あいつは、俺にとっちゃあもうなくてはならない存在なんだ。

「龍也ー。一週間」

俺がニヤリと笑うと、龍也は「はいはい」と呆れたように笑い返す。

「相澤空夜。それまでに準備しとけよー!」

「はい。王覇を全部動かしてでも…」

おぉー。恐い恐い。

ま、そんくらい大事ってことだろ。

「早く、あいつにアメでも食わしてやんねぇとな」

「あれ?春輝ってアメ好きなんだ?」

「本田飛鳥。お前知らねえのか?
あいつ、甘党なんだぞ?」

「意外だな。でもまぁ、あいつも女だしな」

「蓮、性別は関係ねぇだろ。お前は見た目通りだけど」

「なんだと秋人。お前甘党のくせによ。
あんな甘ったるいの、どこがうめぇんだよ」

「ふふっ、じゃあ今度、甘いの倉庫に用意しとくか。
あの子がいつ来てもいいようにさ」

「はぁ?直、あんなやつにそんなことしねぇても……いてぇっ!!
おい空夜!無言で殴るんじゃねぇよ!」

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