翼~開け放たれたドア~
だけど、そんな俺の考えはすぐに打ち砕かれることになる。

慌てた様子の下っ端に、信の目が大きく見開かれる。

何かあったのかと聞こうとする前に、信は下っ端を押しのけて部屋を飛び出した。

「え、信!?」

優太の戸惑いの声にも反応せずに。

いつもならいつも一緒に行動する優太を置いていくほどだから、それほどに大変なことでもあったんだろうか。

俺らも部屋を出て、踊場から下を見下げる。

目に飛び込んできた光景に、俺の思考は止まって、またぐるぐると渦巻いて。

とにかく、それが信じられなくて。

人混みをかき分けるようにして、騒ぎの中心へと向かう信も。

それを見て道を開けていく下っ端も。

全部が色褪せて見えていく。

ただ、その中心にいる

「wingっ!!!」

下っ端に抱きかかえられてぐったりとしたあいつの姿だけが鮮明に見えて仕方なかった。
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