翼~開け放たれたドア~
身体がひとりでに動く。

気づいたときには手すりを通り越して、宙に浮いていた。

そのまんま着地すると、脇目もふらずに信とあいつの元へと駆け寄った。

後ろから、軽い着地音と駆ける音が聞こえてきたから、たぶん優太もきているんだろう。

近くへと行くと、信は険しい表情でwingの具合をみていた。

信は緑華のなかでも一番、治療に長けている。

だから、基本的にこういう場合は、信が手当てする。

「信…wingは……?」

震える声で、いつの間にか隣にきた優太が訊ねる。

信はこちらを見、そして“大丈夫”という風に頷いた。

「外傷はない。ただ、高い熱がある。
薬は飲ませられないけど、寝かせたほうがいいだろう」

熱…。

昨日降った雨にでもあたったのか?

「…あっ!!氷とか準備しなきゃ!」

ハッとしたように声をだしてから、優太はパタパタと上に駆け上がっていった。
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