翼~開け放たれたドア~
「わりぃけど俺は“クウヤ”?って奴じゃあ…」

そこまで、言いかけたときだった。

「お、おい!!?」

ポロリ、と。

wingの瞳から透明な涙がこぼれ落ちたのは。

え、ちょ、な、は!?

どーすんの、これ。俺泣かしたの?

……いや、落ち着け。落ち着くんだ、俺。

俺は何もしてないはず。

…じゃあなんで泣き出したんだ。

俺は茫然と目の前の奴を見ていた。

しゃくりあげることもなく、ただ静かに“クウヤ”って奴の名前を呼んで涙を流すwingは、噂で恐れられるwingじゃなくて。

今、目の前にいる普通の少女に、俺は言葉を失った。




──バァンッ!!

突如としてドアが大きな音をたてて、小さい奴……優太が元気に部屋に入ってきた。

「結翔ーっ!!おは…」

叫び声にも近い大声が途切れたのに不思議に思い、首を傾げると。

「…結翔。なんでwing泣いてるの?」

…あ、そーでした、ね……。

思わず目を泳がせる。

結翔が怒っているときには、特徴がある。

一つは、笑っていたとしても目が笑っていないこと。

そしてもう一つは

「場合によっては、赦さないよ…?」

語尾をのばさずに話しているとき。
< 338 / 535 >

この作品をシェア

pagetop