翼~開け放たれたドア~
いつの間にか静まり返った倉庫に、春輝の声は小さいのによく響いた。

だけど、そんなことよりも──

「空夜ぁ…やだぁ…離れないで…!」

顔が、熱い。

必死に俺にしがみつき、いつもなら出さないような甘える声。

好きな奴のそんな声聞いたら、顔が赤くなるのも当たり前だろ?

でも、こいつのこと抱いてるから手は使えねえ。

顔隠してえんだけどな…。

緑華の奴らが焦っていたのは、こいつがこんな風になっちまうからか…。

こんなにかわいく泣かれたうえに、こんなに甘ったるい声出されちゃ…マジでやばい。





──…お、おい!あの総長が顔真っ赤だ!!

──…だよな!レアだなぁ…

──…なぁ、写真撮ろうぜ!!

こんなこと言ってる下っ端もいるし……。

さっきまでは、なんでwingがここに連れてこられたのかざわついていたのにな。

こいつらは昨日のことも、春輝がwingだってことも知らねえ。

俺は照れ隠しでそいつらを睨みつけた。

だけど、そんなのお構いなし…というか、うかれていて気づかないそいつらは、いそいそと携帯を出し始めている。
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