翼~開け放たれたドア~
…あぁ、そうか。

嬉しかったのか。こいつは。

「…緑華は…王覇との同盟を……望む…」

「……あぁ」

「…あ、りがと…な……」

「ふっ。…あぁ」

俺は、腕のなかで眠る愛しい存在を確かめるように、腕の力を強くした。

それでも眠り続けるこいつがおかしくて、少しだけ笑う。

「……そういえば、なんで君たちだけで来たの?
危険だってことは十分わかってたことでしょ?」

俺の横に来た直。

なんとなく肩越しに後ろを見ると、いじけた飛鳥が倉庫の隅でキノコ栽培をしている。

それをフルシカトで俺の近くにいる残りの奴らに視線を送れば、

「…まぁ、ね」

直はそんな曖昧な返事をして楽しそうに笑ったからだいたい想像がついてしまった。

どうせまたあいつが騒いだんだろう。
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