翼~開け放たれたドア~
ジーっと見てくる春輝の視線から逃れるように、顔をこいつの肩にうずめる。

「…空夜?」

俺の名を呼ぶ愛しい声が耳をくすぐる。

「春輝、わかってあげて?
空夜は心配症なだけだから」

クスクスと笑う直の声が聞こえた。

「心配症…?」

「んー…、まぁいつかわかるよ」

「心配…してるの?」

「意外とそんなものだよ、空夜は」

「…そうなの?」と、春輝は聞いていたが、直は何にもしゃべんなかった。

…いや、もしかしたら頷くとかでもしてたかもしれねぇが、俺はそんなのどうでもよかった。

俺の頭をふわふわと撫でる、この冷たい体温がどこかに行ってしまわぬように、抱きしめているだけ。

強く…強く。

そうでもしねぇと、こいつがどっかに飛んでいっちまいそうだった。

「……私のこと、そんなに考えてくれてるの?」

「当ったり前じゃん!!
春輝は俺らの仲間なんだからさ!」

春輝のもらした言葉に返事する、飛鳥のバカでかい声。

それに「そーだよ」と直も同意する。
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