翼~開け放たれたドア~
「今日はどこ行くの?」

そう笑って問いかける私は、2人の顔が一瞬曇ったのに気づいていた。

だけど、次の瞬間には微笑んでいたから、何も言えなかった。

今思えば、あの時なにかを言っていれば、なにかを変えられていたのかもしれない。

「春輝、いい?
なにがあっても、私たちが守るからね?」

「守る…?」

首を傾げる私に、お母さんは笑みをこぼしてから、ふわりと私の頭に手を乗せる。

どこか心地よい重さと、ゆっくりと撫でられるその感触が大好きだった。

お母さんは、私の頭を撫でることが多かったから、もしかしたらお母さんの癖だったのかも。

それになんとなくホッとした私は、感じた違和感をそのままにしていた。







だんだんと色を変えていく景色。

もう、季節は春になるころだったけど、それでもまだまだ冷え込む…そんな時期だった。

真っ白な地面を踏みしめ、私たちはどれくらい歩いたんだろう?
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