翼~開け放たれたドア~
「お前…気づいて…?」

信じられないといった様子の雷。

私は無言で、丸くなった瞳を見つめていた。

「…だって、あんなに離れていて、それに気配も消してたってのに……」

それを聞いて、私はゆっくりと口を開く。

言おうか、言わないか…。

少しだけ迷ったけど。

「だって──」

私はため息をつくと、思い切って言った。

「雷なんだもん…」






「「「………………」」」

あーぁ…、みんな黙っちゃった。

だから、言いにくかったんだよなぁ。

「春輝、さん?それってどういう…?」

いち早く我に返った龍也が、雷を気にしつつ問いかけてくる。

「だってさ。
つまづいて転んだり、大きなくしゃみしてから慌てて隠れたりしてたら…遠くても気づくでしょ」

「………確かに」

「で、そんなことをやらかすのは?」

「……雷、ですね」

「でしょ?」

首を傾げて聞き返すと、予想通りの答えが返ってきた。
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