翼~開け放たれたドア~
誰かが床を蹴り、こちらに走る気配がした。

私は素早く赤城啓悟の正面に回り込み、片手をあげて庇うようにして立つ。

ビタッと、赤城啓悟に殴りこもうとした相手──雷の動きが止まる。

咄嗟に後ろへと飛び移り、そして目を見開くのが目に入った。

「は、るき…?」

どうして、と私を見つめる雷の目を無言で見つめる。

戸惑いの色が、その瞳を揺らしていく。

その後ろには、龍也と、そして空夜たち。

「春輝…?なんでお前ここに…」

こちらに近寄る空夜が雷の後ろにいたけど、私はただ真っ正面…雷から目をそらさなかった。

それをどう受け取ったのか、空夜は雷の一歩斜め後ろで歩みを止める。

“行くぞ!!”

雷…、私ね、嬉しかったんだと思う。

監視していた人だったし、人なんて嫌いだけど、連れ出してくれて嬉しかった。

…ごめんね。ありがとう。

一瞬でも見れた光。

見上げた青空。

今はもう鉄の柵で見えなくても、確かにそこにあることを知ったから。

ただ、それだけで──
< 394 / 535 >

この作品をシェア

pagetop