翼~開け放たれたドア~
「……っ!」

ごめん、ね。ごめんなさい。

目頭が、熱くなる。

…あれ?なんだろう。

景色がじわりと歪み、息が苦しくなる。

「……っ」

慌てた様子の雷と龍也が駆け寄ってくるのが見えた。

「「「春輝!」」」

「春輝さん!」

かろうじて働く頭を、必死に横に振る。

ちがう、私は、私は…。

泣きそうになんてなってない。

wingが泣くなんて許されない。

だけど、それでも、

「春輝…っ」

名前を呼んでくれる、一番愛しい声の持ち主が私を優しく包んでくれるから。

……離れられなく、なる。

「いや、いや…っ!」

なのに、心は複雑だから。

抱きしめてほしい。来ないでほしい。

聞いてほしい。何も言わないでほしい。

気づいてほしい。そっとしといてほしい。

あぁ…、私はなにがしたいんだろう。

「……離さねえよ」

空夜は、私を抱きしめたまま離してくれない。
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