翼~開け放たれたドア~
グイグイと胸板を押すけど、どうしてだろう。

本気で、拒否できない自分がいた。

「……お前は」

空夜が、小さくゆっくりと、問いかける。

「“wing”として王覇にいたのか」

「……っ!?」

息が詰まった。

目を見開くけど、目の前は黒いままだったから、私の表情は読めないはず。

なのに空夜はそれを見越していたかのように、ゆっくり、ゆっくり、子供に言い聞かせるように、言葉を続ける。

「少なくとも俺らはちげえ。
1人の人間として、“春輝”としてお前と接してきた」

それを聞いて、私は首を横にふる。

だけど、空夜が私の後頭部を手で引き寄せ、自らの胸に押しつけたから動けなくなる。

「たとえそれが黒髪に黒目っていう変装だろうが、今のお前だろうがそれは変わりねぇ」

嘘、だ。

そう、口からはでそうで仕方ないのに。

この人はちがうかもしれない。

そう、頭のなかでは考えてしまう。




「どんな恰好でもお前はお前だ」

──止めて

「ホントは、気づいてんだろ?」

──止めて

「お前が一番嫌ってるのは人じゃなくて──」

──止めて!!

「違う!!」

「違わねえよ、春輝」
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