翼~開け放たれたドア~
腰に届くほどに長い白い髪が、視界を遮って、目の前の皆が見えないよ。

…ねぇ、誰か……

「──…て……」

「は、るき…?」

空夜、お願い。私をもっと、呼んで。

「空夜…」

「春輝?」

……言える、わけがなかった。

“助けて”なんて。言えないよ。

開きかけた口を閉ざす。

さっき、ほとんど無意識に呟いていた。

聞こえてなくて、本当に…よかったと思う。





──…ほんとに?

私…このままでほんとにいいの?

だって、私まだ大事なこと忘れてる。

大事な人を、私は…、どこに置き去りにしているの?

…あれ?大事な人?

“助けて…っ!いやぁ!!”

“春輝っ!!”

私は前にも……助けを求めたことがある。

脳裏に浮かぶのは、知らない人に掴まれて痛む腕。

そして──
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