翼~開け放たれたドア~
だけど、髪を引っ張られる痛みからは逃れられない。

「茶番はそこまでですよ」

この男は一体今、どんな顔をしているんだろうか。

「wing、君は赤城組を裏切るつもりですか?」

面白くなさげなその声に、ギリッと歯を噛みしめる。

「君は赤城組に求められてる人材なのですよ。今更何を躊躇うんですか。
俺がずっとここにいたのに、それでも俺より君を求めた……」

髪を掴む手に、力がかかるのがわかった。

痛みで顔が歪む。けど、決して声は出さないようにした。

「なのに、自らそれを退けるなんて許さない。
君にはもっともっと苦しんでもらう……!」

驚いて、赤城啓吾のほうを振り返った私に顔を近づけて、赤城啓吾は私を睨みつける。

…怖い。

殺される、と。そんな考えが率直に浮かんできた。

「俺だって…父上に…」

──え?

この人…もしかして……

私は目を丸くして、それを問いかけようとしたときだった。
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