翼~開け放たれたドア~
今は、お兄ちゃんが手の届く場所にいるから。

目の前の大きな胸に飛び込み、あの時できなかった謝罪を繰り返す。

「……め、なさ……ごめ、んなさい……っ!
わた、しのせ……で、おか、さんが…。
…ご……めなさい…おに、ちゃん………っ」

ずっと、ずっと…謝りたかったの。

「春輝……、あれはお前のせいじゃねぇよ…」

泣きじゃくる私を、お兄ちゃんは優しく抱きしめてくれる。

だから、涙腺が崩壊して余計に涙が溢れてくるんだ。

ギュウッて背中に手を回して抱きつくけど、空夜よりは背がなくても、お兄ちゃんの背中はどうしても大きくて手が回らない。

服にしがみついて、必死に、もうどこにも行かないようにと縋る。

しばらく、お兄ちゃんから離れられなかった。






「……まだ、春輝に関わるつもりか?」

どれくらいたったんだろう?

お兄ちゃんの声が、身体越しに伝わってきた。

私はそっと腕をとくと、身体をもぞもぞとさせてお兄ちゃんから離れる。

そのままお兄ちゃんの横をすり抜けると、今、誰よりも抱きしめてほしかった人の元へと駆け寄った。

勢いそのままに、ぽふっと大きな胸板に顔をうずめ、きゅっとしがみついた。

「…おい?春輝?」

珍しく少し焦ったようなその声。
< 416 / 535 >

この作品をシェア

pagetop