翼~開け放たれたドア~
それでもそのまま抱きついていると、一瞬だけピタリと動きが止まったけど、優しく抱きしめ返してくれた。

そして、ふわりと身体が浮く。

いつもと同じように抱き上げてくれた。

「空夜…」

「……大丈夫だ」

不安なのがわかったんだろうか。

そう、空夜は力強く言ってくれる。

空夜が大丈夫というと、なぜか“大丈夫”なんだと思える。

お兄ちゃんのほうを向けば、眉間に皺を寄せた赤城啓吾とお兄ちゃんが向かい合っていた。




「……もういいだろ?
こんなことしたって虚しくねぇか?」

「なんのことだ?…海カイ」

赤城啓吾はお兄ちゃんの名前を呼ぶと、余計に表情を歪ませる。

「惚けんな。ホントは自分でわかってんだろ?
こんなことしても意味ねぇって。
なぁ、そうだろ?──兄貴」

その言葉に反応したのは、王覇の皆。

「は?」とか「え…?」とか、間抜けな声が聞こえてきた。

雷と飛鳥に至っては、

「「へ?ん?は?あ……え?」」

なんて、いろいろと顔を百面相させて、顔を見合わせつつ混乱してるみたいだけど。

そう。お兄ちゃんの名前は赤城海。

赤城啓吾の…紛れもない弟だ。

そして

「……ねぇ」

「あ?どした?直」

「蓮、気づかない?あの海って人…」

「気づくもなにも、俺はあんなヤローのこと知らねえけど?」

「バカ蓮。あいつ…水風の最後の総長だ」

「あ゙!?あいつが!!?」
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