翼~開け放たれたドア~
直と秋人が気づいていたとおりお兄ちゃんは私が潰した……水風最後の総長。

「え、アレが?…あたっ!」

飛鳥の失礼極まりない“アレ”呼ばわりに、直が素早くひっぱたく。

龍也は、メガネの奥の瞳を細めて見守っている。





「うるさい。
赤城組(ここ)を出て行ったお前に何がわかる?
赤城組のやることを否定し、父上と一緒に出て行ったお前に……」

赤城啓吾はお兄ちゃんを睨みつける。

「わからないだろうな。
1人残されてプレッシャーに潰されそうになって、でも逃げ出すこともできないこの状況がどんなに苦しいか……」

あ……。やっぱり…。

「あんた…」

思わず声がもれた。

しまった、とでもいうように、赤城啓吾は気まずげに視線を背ける。

私は空夜の目をジッと見つめてみる。

空夜は軽く頷くと、私をそっとおろしてくれた。

ちょっと怖いけど…。

そう思いながら、一歩ずつ赤城啓吾に近づいていく。
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