翼~開け放たれたドア~
睨みつけてくるから、負けじと見つめ返すと、赤城啓吾の瞳が揺れた気がした。

「……やっぱり…一緒だ」

この人は似てる。

「さっきまでの私見てるみたい」

他の誰でもない、私に似てるんだ。

「……ホントはお父さんとお兄ちゃんと一緒に行きたかったのに、赤城組(ここ)からでるのが怖くて行けなかったんじゃないの?
でも、どうしても寂しかったから、こんなことしてるんじゃないの?」

「……うるさい」

呟かれた声はひどく小さく、そして震えていた。

「あんたは…私にそっくりだよ」

寂しくて、寂しくて。

「ただ、誰かに愛してほしかったんじゃないの……?」

そう、愛してほしかった。

いらない、なんて言わないで。

“私”を、愛してほしかった。

でも、あの部屋ではそんなことは言えなくて。

“好き”だなんてもう、忘れてしまってたから。

わからなくなって、自暴自棄になって、自分を責めて、そうしてごまかしてきただけなの。

私を抱きしめて、温もりを共有して…。

それだけで、今の私はこんなに満たされているのに、それをあの頃の私は知らなかった。

それだけでよかったのに、そんなことは知らない。知ってたとしても、言えるわけなかった。
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