翼~開け放たれたドア~
「く、は、はは…。
さ、すがwingだ、な………」

うつ伏せのまま笑うその人に、私は冷たい視線を向けた。

「……啓悟、おに…ちゃ…、狙うなん、て……、卑怯き、わまりない…ね……」

痛みで上手く話せない。

「……今……いち、ば……ん…無防備だって、こ、と……知ってた、くせに…」

そう言うと、目の前の老人はふっと笑う。

「弱い奴を狙って何が悪い……!」

その言葉に、私のなかで何かが切れた…。

そんな感覚がした。

──あぁ、どうしよう。

「……ふざ、けるんじゃねぇ…!!」

柄にもなく、感情がおさえられない。

「弱、い?そ、んなの…間違えて、る…!
よわ、いのは…!
銃を、つ、かうこと…でしか…勝てない…お、まえたち、だ……っ!
金で、しか……人をあつ、める……こと、ができな、い……お前たちだ……っ!!」

私は老人の胸ぐらを掴んで強引に引き寄せると、恐怖で歪むその顔を思い切り睨みつけた。

殺気を最大限にだして。

その人の顔が蒼白になっていくのさえどうでもよかった。

こんな奴に、私の大切な人たちが傷つけられていたのが悔しかった。
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