翼~開け放たれたドア~
だけどさすがに、背中に手を回されちゃ血の感触があるだろうから気づくだろうね。

「さっきの……、当たってたのか…?」

「……う、ん…」

曖昧にだけど微笑んでみせる。安心させたくて。

「おい!春輝しっかりしろ!!」

「救急車呼んでくる!!」

海お兄ちゃんと啓悟お兄ちゃんの声が遠く聞こえた。

だけど、遠くても聞こえていたそれさえ、段々と聞こえなくなってくるんだ。

ゆっくりと、瞼が下がっていく。

「おい、目ぇ瞑んじゃねぇ。
春輝、俺を見ろ。目ぇ開けて俺を見ろ。春輝?」

うん、開けたい。空夜の顔、見たいよ。

でもね、力が入らないの。

「おい、春輝?」

だから……

「は、るき?」

手探りで、空夜に手を伸ばす。

小刻みに震える大きな手が、私のそれを包み込んだ。

「く、ぅ……や…」

あ、今なら、できる気がする。

力を入れると、だんだんと広がる世界。

ぼやけるその視界に、空夜の顔と、繋がれた私と空夜の手が映りこんだ。

「……くう、や…あ、のね……」

ねぇ、ようやく気づいたの。

「春輝…もういいからしゃべんじゃねぇ」
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