翼~開け放たれたドア~
「わ、たしね……」

「いいから…しゃべんじゃねぇよ……」

空夜の弱々しい声しか聞こえない世界で。

「たぶ、ん…あのと、き、からね……」

必死に、言葉を紡ぐ。

「頼む……もう止めてくれ…」

「ずっと……空夜の、こ、とね…」

あぁ、ダメだ。

ますます空夜の顔が見えなくなる。

ぼやけて、滲んで、世界がだんだんと、色を無くしていく…。

「おい、春輝!?目開けろ!!」

伝えたい言葉があるのに。

瞼が重くて、完全に色が遮断される。

「お願いだから……、俺を置いてくなよ…っ」

そんな言葉を最後に。

一筋の涙が頬を濡らすのを感じながら、私の意識は真っ黒な世界へと放り出された。
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