翼~開け放たれたドア~
白いワンピースに身を包み、あの頃と変わらない微笑みを浮かべるお母さんに抱きつくと、大好きなあの香りに包まれた。
縋るようにしがみつく私を、お母さんは何も言わずに抱きしめ返してくれた。
「お母さん…私…っ!ごめんなさい……っ」
「ふふ。春輝、謝っちゃダメよ。
アレは私がしたくてしたことなの」
「でも…っ」
私は尚も言おうとすると、お母さんは「こら」と困ったように私の頭を小突く。
「聞きなさい。春輝。いい?
私は春輝を愛してるからあなたを庇ったのよ?
なのに、それをあなたが気にしてたらダメよ。
私のやったことが無駄になっちゃうじゃない」
ね?と、お母さんは笑う。
「……私はね。ちゃんと“幸せ”だったわ」
「幸せ…?」
お母さんの胸にうずめていた顔を上げると、お母さんの目に私が映りこんだ。
「そう。幸せ。
お母さんはね。お父さんに会えたし、あなたとも会えた。
あなたが笑ってくれたし、こうやって抱きついてくれる。
それが“幸せ”だと思うのよ」
ふわりと微笑むお母さん。
「だからこそ、お母さんはあなたを守りたかった。
死んでほしくなかったの。
もっともっと、生きていてほしかった…。
だからこそ、春輝を庇ったのよ」
じわりと視界が歪んだ。
ぐしぐしと目を擦り、しっかりとお母さんを見る。
だけど、また視界は歪んで……。
「ふふ…。相変わらず泣き虫なのね。
記憶、無くしてたときとは大違い…」
「お母さんだって、私に何か言い聞かせるとき、自分のこと“お母さん”呼びすると変わってない……」
あれ?泣いてるのに言葉が普通に言える……?
しゃくりあげることもない。
ただただ、涙ばかりが溢れて止まらなかった。
生理現象みたいだ。
縋るようにしがみつく私を、お母さんは何も言わずに抱きしめ返してくれた。
「お母さん…私…っ!ごめんなさい……っ」
「ふふ。春輝、謝っちゃダメよ。
アレは私がしたくてしたことなの」
「でも…っ」
私は尚も言おうとすると、お母さんは「こら」と困ったように私の頭を小突く。
「聞きなさい。春輝。いい?
私は春輝を愛してるからあなたを庇ったのよ?
なのに、それをあなたが気にしてたらダメよ。
私のやったことが無駄になっちゃうじゃない」
ね?と、お母さんは笑う。
「……私はね。ちゃんと“幸せ”だったわ」
「幸せ…?」
お母さんの胸にうずめていた顔を上げると、お母さんの目に私が映りこんだ。
「そう。幸せ。
お母さんはね。お父さんに会えたし、あなたとも会えた。
あなたが笑ってくれたし、こうやって抱きついてくれる。
それが“幸せ”だと思うのよ」
ふわりと微笑むお母さん。
「だからこそ、お母さんはあなたを守りたかった。
死んでほしくなかったの。
もっともっと、生きていてほしかった…。
だからこそ、春輝を庇ったのよ」
じわりと視界が歪んだ。
ぐしぐしと目を擦り、しっかりとお母さんを見る。
だけど、また視界は歪んで……。
「ふふ…。相変わらず泣き虫なのね。
記憶、無くしてたときとは大違い…」
「お母さんだって、私に何か言い聞かせるとき、自分のこと“お母さん”呼びすると変わってない……」
あれ?泣いてるのに言葉が普通に言える……?
しゃくりあげることもない。
ただただ、涙ばかりが溢れて止まらなかった。
生理現象みたいだ。