翼~開け放たれたドア~
もっともっと……。

そう、思ってしまうのは事実だけど…。

だけど、それが叶わないなんてことは、ここにいる私が一番知っている。

ねぇ、そうでしょう…?

なら私はもう迷わない。

お母さんは心のなかで生きている、なんてそんなのは綺麗事。

今、私のなかで…お母さんはもう一度死んだ。

だけど、いつまでも心のなかで微笑んでいるのも知っているから……頑張れる気がするんだ。

もう一度力を込めてから……、どちらからともなくそっと離れる。

「……さあ、行きましょう?
──春輝。あなたの翼を広げなさい」

「…翼?」

「そう。翼よ」

お母さんは後ろに数歩下がってから、おもむろに両手を組んで、自分を抱きしめるようにしてみせた。

すると、お母さんの周りにだけ、ざわざわと風が吹き始めた。

「……っ!?」

なに、これ…?

お母さんがじわりと光っている。淡くて、でも確かな優しい光が、お母さんを包み込む。

と、次の瞬間

──ブワッ!

「ひゃっ…!?」

一際大きな風が吹いたかと思うと、お母さんの背中から大きな白い翼が……。

……って、ええっ!?

というか、は、生えたよ…ね。

もうなんでもありなんだね。この世界。

…私の心ってどうなってんだろう。

ちょっと心配になってしまった。
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