翼~開け放たれたドア~
取り乱した雷さんの声。

そんなの……俺が聞きてえよ…っ!

「……めんな…っ。ごめんな…春輝……っ!」

情けねえな…。俺……。

頬を滑り落ちる冷たいもの。

泣いたのなんて…あんとき以来なんじゃないだろうか。

俺を捨てた母親のことでさえ、今のお袋たちがいなけりゃあ泣けなかったのに…。

「……っ!…ご、めん……っ」

「お、おい…?相澤空夜…!?」

俺の様子がおかしいことに気づいたからか、幾分か冷静になったらしい雷さんが、俺の肩に手を乗せる。

だけど、俺の身体の震えは止まらなくて……。

「……相澤…」

悲しそうな龍也さんの声に、俺の涙腺はさらに崩壊する。

「……あ、あぁあ……っ」

ごめん。ごめん、と。

何度も何度も繰り返す。

謝っても謝りきれなくて。

守れなかった悲しさ。

気づけなかった悔しさ。

失ってしまうかもしれない、怖さ──……。

「──ああぁぁあああ!!!」

自分の無力さが恨めしい。

どうして俺は、大切なものさえも守れないんだろう?

あんなにも守るんだと誓ったのに、そんな自分自身への誓いさえ、俺は破ってしまうんだろうか。

ポタポタとこぼれゆく涙が、愛しい奴の頬を濡らしていく。
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