翼~開け放たれたドア~
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「は…っ」

息が詰まっていたらしく、それを吐き出した。

身体が震えてガバッと起き上がると、最初に飛び込んできたのは白いベッド。

一瞬戸惑うが、あぁ…ここで寝ちまったのかと頭が勝手に理解する。

視線を少し横にずらせば、未だ目を覚まさない春輝がいた。

ピッピッと規則正しい機械音がその病室に嫌に響いているように聞こえる。

酸素マスクで見えづらい顔は、あのときのように歪んでいることもなければ、頬が緩むこともない。

いっそのこと、自分を責めていたころのままでいいから、その瞳に俺を映してほしいとさえ思えてくる俺はよほどの重症なんだろうか。

「……春輝…」

呼んでも、呼んでも。

応えてくれないという寂しさをまた味わうことになるなんて思ってもなかったな……。

右手に、微かに残る温もりを感じる。

それをギュッと握りしめても、その小さな手は握り返してなんてくれなかった。
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