翼~開け放たれたドア~
海さんの顔を見てられなくて、静かに視線を下へと向ける。

唯一、こいつとの繋がりを感じられる俺の両手が、寂しく目に映った。

……あぁ…。ちっせぇな。こいつの手。

いや、全部ちっせぇんだけど。

………そうだ。こいつと初めて会ったときも

「──おんなじこと思ったんだ…」

龍也さんに抱き上げられ、無表情でこちらを見つめるパーカーのフードを被った生徒。

初めて聞いた声は、確かに低い声なのになんだか透き通っていて、中性的な感じで心地良かった。

女だと思い始めたのは暴走したとき。

雷さんと龍也さんを呼んだときに、なんだか声が高かったから。

高いけれど優しくて……それも心地よかった。

そして確信したのは、春輝が倉庫でおびえていたときだった。
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