翼~開け放たれたドア~
“や、だ…来るなっ!!”

そう強気に言ったようにみえた春輝はすげぇか弱く目に映りこんだ。

人を拒絶し、カタカタと震える春輝を、あのとき確かに『守りたい』と思ったんだ。

気がつけばこいつの側へと足を運んでいた。

手を伸ばし、フードの上からそっとその頭に軽く手を乗せた。

“黒、髪…”

頭に乗せた手にビクリと肩を跳ねさせ、瞳を不安でいっぱいにさせながら俺を見上げた春輝。

その、助けを求めるような声に。

俺を見上げるその大きな瞳に。

直感……といっても、“そうなんじゃねぇか”という思いが元からあったから違うかもしんねぇけど。

こいつは、女だ。

そう強く感じた。

証拠とかなんてなかったけど、そう断言できるほどに。

……もしかしたらあのときから…、俺は春輝に惚れてたのかもしれねぇな……。

理由なんてわからねぇ。

ただ単純に、俺はこいつのことが好きなんだと感じる。

身体が、心が…、こいつを求めてんだ……。
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