翼~開け放たれたドア~
ギュッと手に力を込める。

春輝………目ぇ覚ませよ……。

そしたら、こんな場所からお前を連れ出していくことだってできんのに………。

この腕のなかに閉じ込めて、お前を守ることだってできんのに……。

ん……?




───“守る”……?





…………俺は、こんなんでこいつを守れるのか?

春輝を守れるほど強いって言えんのか?

目を瞑ったままの春輝の顔を、はっとした思いで見つめる。

こいつは、こんな“俺”を望むか…?

いや、そんなわけねぇ。

春輝は…、絶対こんな俺を望まないだろう。

“何してんの”

海さんと同じ……あの何もかもを見透かしたような紺色の瞳を向けて、そう言われちまうような気がしてならない。

だって…今の俺は──自暴自棄になってるだけだ。

もし春輝が次の瞬間に起きたとしても、俺はこいつを守れないだろう。

失うことが怖くて動けずにいるんだ。

だけど、それじゃあ俺はいやだ。

こいつを……守るために強くなりたい。
< 467 / 535 >

この作品をシェア

pagetop