翼~開け放たれたドア~

それは突然に

海さんはあのあと、ポツリポツリと話してくれた。

春輝を守れなかったから、今度こそはと思って強くなることを決意したこと。

そのために、水風に入って喧嘩を習ったこと。

見違えるほどに喧嘩が上達して、それがその時の総長に認められ、次期総長の候補になったこと。

そして、総長になったとき、自分の手で篠原組のことを調べ上げ、春輝を助け出そうとしたこと。

だけど、それさえもできずに、また春輝を手放してしまったこと。

春輝が過去を覚えていなくて、ごめんと何度も謝りながら、ずっと抱きしめていたこと──。






その話をしている間、海さんは春輝から目を離そうとしなかった。

そのとき俺は、雷さんに聞いた監視の話をふと思い出した。

泣きながら春輝を抱きしめていたのは、やっぱり海さんだったのか。

「俺がもし強いんだとしたら、それはもう家族を………、春輝を無くしたくないからだ。
唯一無二の俺の妹を守りたいからだ。
俺の強さはそこにある」

海さんは、その強い瞳を俺に厳しく向けた。

その眼差しに、俺は少しだけ怯んでしまった。

海さんの口が開くのを、俺はどこか他人ごとのように見ていたけど

「お前はどうしてそこまで春輝を守りたいと思う?
お前の強さは……どこにある?」

──海さんが言ったその言葉が、病室の機械音さえ遠ざけ、俺の耳の奥にこびりついて離れなくなった…。
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