翼~開け放たれたドア~
俺の目の前を一瞬にして通り過ぎた、医者と見られる白衣を着た野郎と、何人かの看護士。

そして、そいつらに囲まれるようになってるベッドに横たわっていたのは──

「……は、るき…っ」

紛れもない、あいつ。

信じられなかった。信じたくなかった。

嘘だろ?なんで……。

昨日はあんなに普通だったのに…っ!

遠ざかるベッドを心配そうに見つめながら廊下を歩いてきた看護士をとっつかまえて聞いてみれば、さっき、容体が急変したという返事が返ってきた。

ぐにゃりと視界が歪むようだ。

途端に色を無くした世界が、やけにスローモーションのようにゆっくりとして見える。

酸素マスクをつけられ、すげえ青白い顔だった……。

こびりついて離れない、あの海さんの言葉のように……その光景が頭に焼き付いて離れない。

看護士が軽くお辞儀をして去っていったその後ろ姿に

──行かねぇと。

そう気づいて走り出したのは、春輝が乗せられたベッドが通り過ぎてからあんま時間はたってねぇ気もするが、俺にとってはすげぇ長く感じられて仕方なかった……。
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