翼~開け放たれたドア~
春輝を追いかける途中にあった休憩場所。

そこでは電話が使えることを、春輝の見舞いにずっと来ていた俺は知っていた。

そこが目に入ったときに、直たちに連絡しなきゃいけねぇなと考えて、そこへ足を進めるとポケットからケータイを取り出す。

思ったよりも震える指で電話帳を開き、直の連絡先がかかれたそれをタッチして耳元にあてる。

2コールくらいしてから、プツッという小さな音のあとに、聞き慣れた柔らかな声音が俺の鼓膜を震わせた。

〈もしもし。空夜?どうしたの?
今、もうすぐ病院に着くんだけど……〉

「……直、今すぐ来い」

〈…どうしたの?〉

俺の様子がおかしいことに気づいたみてぇだ。

直の真剣な声色に誘われるように、俺は春輝のことを話した。

直が自分以外の幹部の奴らに伝える声が、小さいけれど聞こえてきた。

そのあとすぐに

〈わかった。すぐに行くよ。〉

と言ってきたから

「あぁ」

とだけ返しておく。

〈それじゃいったん──〉

〈春輝いぃぃぃ!!!〉

〈はぁ!?あいつが容体急変!?〉

〈………飛鳥、蓮、落ち着け。うるせぇから〉

キィンとケータイから甲高い音が響いてきやがったから、思わずケータイを耳を遠ざける。
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