翼~開け放たれたドア~
直の言葉を遮るほどの大声を、飛鳥と蓮が出しやがったらしい。うるせぇな、相変わらず…。

だけど、なんで秋人の呆れ声まで聞こえてくんだ?

〈あ、スピーカー押しちゃってた……。
ごめんごめん。うるさいよね?〉

……そういうことか。

「じゃあ聞こえるだろ?
飛鳥、直、秋人、蓮。今すぐ走って来い。
いいな?」

俺はそう言って、直に「よろしくな」と念を押すように付け足す。

直はクスッと笑って、了解と呟いた。

なんか電話を切る前に、パニクる飛鳥と蓮の声が聞こえた気がしたがほっとくことにしといた。

ケータイをポケットにしまおうとしたそのとき、さっきまで焦っていた気持ちが少しだけ落ち着いていたことに気づく。

そういう意味じゃあ、飛鳥たちがいてくれてホントに良かったと思える。

まぁ、あいつらはいつでもバカなだけだろうがな。

俺は、ケータイを握る手に少しだけ力を入れてから小さく思い出し笑いをしてしまった。

クッともれた笑みを隠すように、片手を口元にあてる。

だけど、すぐにそんな表情は削げ落ちて、あいつのことで胸がいっぱいになっていたたまれなくなって……。

ポケットにケータイを乱暴に滑り込ませると、俺は病院の廊下を走り出した──
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