翼~開け放たれたドア~
大きく見開かれた瞳から静かに溢れ出るそれを拭うこともせずに、カーテンのほうを向いている。

「……秋人」

「え?…わっ、え、なんで……」

いたたまれずに名前を呼ぶと、泣いていたことに気づいていなかったらしい。

秋人は自分の頬に伝う雫の感触に、目を見開いて驚く。

すぐにその涙は止まったが、秋人の動揺はおさまらない。

必死にグシグシと服の袖で涙を拭うその姿に、皆が顔を歪めていた。

俺ら幹部は、お互いの過去を知っているから痛みがわかる。

飛鳥が目を潤ませながら、秋人の頭を少しだけ乱暴にくしゃくしゃと撫でる。

そのぶっきらぼうさに秋人が顔をあげ、何かを言おうと口を開きかけたが、飛鳥の表情を見て
眉をひどく下げた。

「そんな顔…すんじゃねぇよ飛鳥……」

「秋人だって泣いてるじゃんか」

そんな憎まれ口を叩き合う二人。

だけど、飛鳥の目からも一粒の涙がこぼれ落ちたその時、誰も何も言えなくなって……。

静寂が俺たちの世界を包んだ。







「……海さんと雷さんたちと緑華のほうには連絡しといたけど…、緑華は、下っ端がアレだし大人数になるから来ないって」

「……わかった」

「雷さんは、龍也さんにも連絡してからすぐに来るって」

「……そうか」

「海さんは…、“春輝なら絶対目ぇ覚ますだろうから俺はお前らに託す”って」

「…………」
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