翼~開け放たれたドア~
どんなに考えても、俺のなかで答えがでてくることはなかった。






──バタバタバタ…

静まり返った廊下に響いた音に我に返った。

「お、おいっ!春輝は……っ」

「春輝さんは……!?」

「雷さん……、龍也さん……」

ハァハァと息も乱れたまんまで、俺の肩を掴んで問いただす雷さんを見上げ、俺は静かに首を振る。

視線をICUのカーテンに向ければ、雷さんも龍也さんもそっちに顔を向けた。





──あれから時間が結構たった。

だけどそれは一時間だったかもしんねぇし、もしかしたら三時間ぐらいだったかも……俺にはわからない。

とにかくあいつが無事であってほしいということだけを祈って、イスに座って手を組んでいたんだ。

ICUのほうを見た雷さんと龍也さんはそれぞれ顔を歪める。

「……まだ…なのか?」

「……はい」

「……そうか」

震える声に震える声を返すことしかできない俺を見て、雷さんは俺の頭をクシャリとする。

それに涙がこぼれそうになったことを、雷さんは知らねえんだろうな……。

雷さんだって辛いはずなのに…。

俺が、組んでいた手をほどいていつの間にか作っていた拳を、強く握りしめたときだった。

ウィン…と、自動ドアが開く音がして、その場にいた全員の視線がそこに集中する。

カーテンの奥から出てきた医者。

だけど、その顔は苦虫を噛みしめたみてぇな渋面で焦ってしまう。
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